破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
(マレーアの領主で伯爵……その娘といえば)
そうであってはならない、ある人物の姿が思い浮かぶ。
一歩、また一歩と絨毯を踏みしめ、恐る恐る姿見に自分の姿を映し……。
「やっぱりアーシェリアスーーー!!」
転生した自分の名を叫んだ。
「なんでアーシェリアス!」
愕然と膝をつく少女、アーシェリアス・ルーヴは主人公ミアのライバルとなる令嬢なのだが、莉亜はミアでないことを嘆く前にアーシェリアスであってはならないのにと落胆していた。
その理由は、莉亜の推しキャラにある。
莉亜の推しキャラ。
それは。
「アーシェ! 何かあったのかい!?」
心配し駆けつけたこの青年。
「……レオ……兄様ぁぁぁ……」
レオナルド・ルーヴ。
アーシェリアスの兄だ。
ミアとなって推しキャラのレオと結ばれる。
その夢は、莉亜の記憶が覚醒してから五分も経たぬ間に潰えた。
養子や実は友人夫婦の息子などという設定であればまだ良かったが、アーシェリアスとレオナルドは正真正銘の兄妹だ。