破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「なぜこんなことに……うぅっ」
嘆く妹の傍らに膝まづくレオナルド。
覗き込むように首を傾げると、アーシェリアスと同じ綺麗な黒髪がさらりと流れた。
「何があったんだ? 俺に話せるかい?」
間近に迫るレオナルドの端整な顔。
アーシェリアスとしては見慣れた顔だが、莉亜としては歓喜の声を上げそうになり、それを必死に押し留める。
「な、なんでもないの、兄様」
「でも叫んでいただろう? 顔も少し赤い」
(それはレオがかっこいいから! しかも若い!)
心の中で返して、アーシェリアスは「本当に大丈夫だから」と誤魔化した。
しかしまだ心配そうに眉を下げて様子を伺うので、アーシェリアスは「悪い夢を見たの」とレオナルドに告げる。
すると、レオナルドの手がアーシェリアスの背を優しく撫でた。
「母上を失ったばかりだ。仕方ない」
母を失ったのはレオナルドも同じだ。
けれど、気丈に振る舞い妹の痛みを和らげようとする。
莉亜はレオナルドの強くあろうとする姿勢と優しさが好きなのだ。
上から目線で傲慢なアーシェリアスと兄妹とは思えないと、ゲームをプレイしていた時はよく思っていた。