破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
エスディオに向かう途中の宿場町。

その手前に、二又に分かれる道がある。

そのまま直進すれば宿場町だが、左へ曲がると温泉地カリドへと辿り着くのだ。


「温泉! それすっごく素敵だわ!」


実は、カリドの温泉にはいつか行きたいという願望が以前からあったアーシェリアス。

推しキャラの兄レオナルドは、二年ほど前に訪れたことがあるらしく、とてもいい宿があると聞いていた。


(確か、貸し切りにできる露天風呂があるのよね)


部屋に空きがあるかはわからないが、カリドに行くのならまずはそこを訪ねてみようと頭の中で計画を練っていく。

アーシェリアスのテンションが高くなったのを見て、ザックが「行くのか?」と問いかけた。


「もしザックとエヴァンさんが嫌じゃなければ、ノアちゃんのアドバイス通り、ちょっとリフレッシュしてもいい?」

「アーシェが行きたいなら俺はかまわない」

「俺は、アイザック様がいいなら異存はないぞ」

「んじゃ、決まりだねっ」


ノアが笑顔で拍手し小首を傾げると、アーシェリアスも喜び笑みを零す。


「ありがとう、みんな」


感謝を述べるとアーシェリアスは前を向き、心を弾ませながらカリドへと進んだ。

温泉はもちろん楽しみだけれど、温泉地でしか巡り合えない料理があるかもしれないという期待を胸に。

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