破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします

「ノアちゃんいつのまに!」

「この宿のカウンターにあったんだ」


無料のパンフレットらしく、どうやらアーシェリアスが女将と話ている間に手に入れたようだ。

広げたパンフレットにはマップが載っていて、アーシェリアスは各宿の名前に目を走らせる。

敷地の広い愛染の湯はすぐに見つかり、宿名の下に書かれた紹介文を読み上げた。


「えっと……"広い温泉で癒されるのはもちろんのこと、踊り子や魔術師のショー、さらにはカジノまで! 満足すること間違いなし!"か……」


温泉による癒しの時間だけでなく、娯楽も提供する。

まして新しく綺麗な宿となれば、温泉地に訪れた人々は興味を持ち、愛染の湯に泊まってみようと足を運ぶのは理解できる流れだ。

まだ繁忙期に入ったばかりだし、愛染の湯は物珍しさで賑わっているだけで、落ち着いたらゆらたま亭の宿泊客が増えるのかもしれない。

部屋も見渡す限り清潔で、さきほど部屋へ案内がてら場所を説明してもらった風呂も、チラッと覗いただけだが、特に悪い点は見当たらなかった。

ゆらたま亭の落ち度で客足が遠のいているわけではなさそうだと思案しつつ、アーシェリアスはパンフレットそっと閉じる。


(前世だったらSNSの口コミで人気に火がつきそうだけど、ファレ乙の世界ではそんな便利なものないしなぁ……)


王都新聞なるものは毎月発行されているが、広告に掲載するにはかなりの金額がかかるので、女将にお勧めしにくい。

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