破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「ボクにも手伝えることはある?」
「ええ! でもまずは女将さんに交渉ね!」
どうか女将が前向きに考えてくれたらいいと願い、アーシェリアスはノアと共にエントランスへ急いだ。
そして、壺を磨く女将を見つけると、さっそく声をかける。
「あの、差し出がましいのは承知なのですが、もし良かったらお客様が増えるように協力させてくれませんか?」
「えぇっ? それは嬉しい申し出ですけれど、一体どうやって?」
「ここでしか食べれないデザートを売りにしてみてはどうかと思うんです」
厨房をお借りできれば、お手伝いしますと話したアーシェリアスの頭には、すでにひとつのデザート案が浮かんでいる。
ファーレンの人々には馴染みがありつつ、けれど少し新しいものを混ぜるつもりだ。
「デザート、ですか?」
「はい! 宿泊者と数量限定! 温泉を楽しんだお客様にもひんやり美味しいソフトクリームと餡子を使ったパンケーキです」
「そふとくりいむとあんこ?」
女将は、聞いたこともない名前に首を傾げる。
それは隣に立つノアも同様だった。