破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「アーシェが落ち着くまでこの兄が共にいよう」
(それ逆に落ち着かないやつ!)
今までのアーシェリアスなら落ち着いたのかもしれない。
けれど、莉亜の記憶が覚醒してしまった今となっては落ち着くはずもなく、下手するとレオナルドに変な目で見られるオチになるのは火を見るよりも明らかだ。
「私は大丈夫。兄様こそ休んで。そして、お父様を支えてあげて」
「アーシェ……」
慈しみを込めた瞳でアーシェリアスを見つめるレオナルドは微笑んで頷く。
「ありがとう。さあ、立って。もう少し休むといい」
「はい、兄様」
レオナルドに促されて立ち上がると、アーシェリアスはベッドに横たわる。
そして、いつものようにレオナルドはアーシェリアスのおでこに口付けた。
挨拶だとわかってはいても、莉亜としては恥ずかしくて頬を赤く染めてしまう。
まだ薄暗くて良かったと思いながら、おやすみと部屋を出るレオナルドを見送り、アーシェリアスは混乱と興奮を落ち着けようとしばらく深呼吸を繰り返したのだった。