破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「ありがとう、みんな。足りないものは……うん、大丈夫。それじゃあ、ウルバーノさん、ティーノさん、よろしくお願いします」
アーシェリアスが軽くお辞儀をしてサポートを頼むのは、このゆらたま亭のオーナー兼コックのウルバーノとその息子、ティーノだ。
ティーノはまだ修行中らしくアーシェリアスが何を作るのか興味津々な瞳で頷いた。
「頑張るよ。アーシェリアスさん、どうぞよろしく」
笑みを浮かべてアーシェリアスの手を両手で包むように握手をするティーノ。
紳士というにはどこか色気のある手つきに、軽く腕を組んで見守っているザックの眉がピクリと動いた。
アーシェリアスが「こちらこそ」と答えると、オーナーのウルバーノも「よろしく頼む」と太い声で言い、がっしりと握手を交わす。
「では、まずは黒蜜と餡子を作っていきますね。黒蜜はティーノさん、餡子はウルバーノさんでお願いします」
説明しながら、アーシェリアスはまず黒砂糖を入れた小鍋を手にし、コンロの前に立つ。