破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
アーシェリアスと出会って、自分は本当に変わったと改めて強く感じるザック。

美しい翡翠色の瞳に見つめられるアーシェリアスは、戸惑いを隠せず視線を彷徨わせた。


(やっぱり、不思議に思うわよね……)


王子であるザックなら、教育などで様々な国の言語に触れる機会もあるだろう。

けれど、そんなザックでさえ見たこともない文字をアーシェリアスが読めるのだ。

そして、その文字が書かれた袋に包まれる食材を使いこなしているのだから、その国に詳しい、その国の料理なのではという考えに至るのも頷ける。

しかし「これは日本語です」と言っても、ファレ乙の世界にはそんな国はないと怪しまれ、ややこしい話に発展するのは想像に容易い。


(でも、下手に誤魔化したり、曖昧にかわすのもよくないよね)


何より、ザックにはあまり偽りたくないと思う自分がいる。

それはなぜか。

いつも助けてくれるから。共に旅をする仲間だから。

いくつかの理由を並べてみても、どれもしっくりこない。

だが、はっきりしているのは、アーシェリアスの中に、ザックにはちゃんと話したいという気持ちがあることだ。

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