破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
(変に思われるかもしれないけど、話してみよう)
別の世界から転生した話など理解してはもらえないかもしれない。
けれど、それなら忘れてくれと言って話を終わらせればいい。
ザックのことだ。
理解はできなくても否定はしないと、そんな風に思うも、不安と緊張に鼓動は速まる。
アーシェリアスは、返事を待つザックを見つめ返して、薄い唇を開いた。
「転生して前世の記憶があるから、って言ったら信じてくれる?」
「前世?」
「アーシェリアスとして生まれる前の、今の私とは別の人間、莉亜という名の女性だったころの記憶」
「リア……。おやきも、そこで作っていた料理なのか?」
ザックは、アーシェリアスの話を疑う様子もなく問い掛ける。
ここでおやきの話題を持ってくるのはさすがだなと微笑し、アーシェリアスは首を縦に振った。
「そうなの。こことは違う世界で生まれ育って、母から作り方を学んだの。でも、色々あって二十六歳の時にうっかり死んでしまって」
「違う世界なんてあるのか……。何で死んだんだ?」
「完結に言うと、マイペースな神様を助けたから、ね」
「神様を助けた?」
いよいよ首を傾げたザックだったが、それも仕方ないとアーシェリアスは苦笑する。