破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「奥方様の葬儀後から、お嬢様が急に大人びたと屋敷の者たちが心配しています」
「あー……」
それは莉亜の記憶が覚醒したせいだとは言えるはずもなく、アーシェリアスはとにかくライラに安心してもらえるよう「成長したの」と明るく笑った。
正直なところ前世の記憶には助けられている。
本来ならまだ悲しみにふさぎ込んでいる時期なのだろうけれど、ゲームで見たもの聞いたものなどがあればテンションが上がり気持ちが少し晴れるのだ。
それに、せっかく転生したのだ。
主人公ではないにせよ、大好きなゲームの世界。
心ゆくまで堪能したいと、アーシェリアスは前向き考える。
だから、悲しい気持ちではなく、温かな気持ちで母のことを思い浮かべた。
料理の得意なアーシェリアスの母は、コックと一緒によく厨房に立って家族の為に手料理を振る舞っていた。
いつか自分も母に手料理を食べてもらいたいと密かに思っていたのだが、残念ながらその夢は叶うことはなかった。