破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「反省してるんじゃなかったのか」
「してるよ。ボクは、シーゾーを労うためにアーシェごと抱っこするんだよ」
「それならシーゾーだけでいいだろ」
にわかに騒がしくなってきた一行を微笑ましそうに見守る女将は、「あの」と再び口を開く。
「もしお急ぎでなければもう数日泊っていってください。もちろん、お代はいただきませんので」
ありがたい申し出に一瞬心を弾ませたアーシェリアスだったが、カリドへはリフレッシュ目的で立ち寄ったのだ。
そもそもの目的は幻の料理の情報を得る為に、エスディオに向かうこと。
温泉をもっと堪能できるのは魅力的だったが、アーシェリアスは申し訳なさそうに眉を下げた。
「とっても嬉しくて素敵なお話なんですが、実は私たち、エスディオに向かう途中なんです」
特に急ぐ旅でもないけれど、厚意に甘えてのんびりし過ぎてもよくない。
なので、予定通り明日の朝出発すると伝えると、女将は目を瞬かせる。
「エスディオに? もしかして、アーシェリアスさんは学者さんなんですか?」