破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「お母様の焼いてくれたスコーンは、お店で買うのとは違う、どこか優しい特別な味がするの。何か特別な作り方をしていたのかしら」
「愛情をたっぷり入れているからですよ、きっと」
「愛情……そうか。きっとそうだわ」
莉亜の母も言っていた。
料理は作り手の愛情だと。
食べてくれる人の喜ぶ顔と美味しいという言葉は最高のお代だと。
アーシェリアスは笑みを浮かべて、切り分けた生地を天板に並べてライラに渡された卵液を塗る。
「旦那様とレオナルド様にも食べていただきましょうね。お嬢様の愛情たっぷりスコーン!」
「ええ!」
そうして、オーブンの扉を閉めるとライラの淹れてくれた少し甘みのあるルイボスティーを飲みながら焼き上がるの待っていた時だ。
「アーシェはいるか?」
厨房にやってきたのはアーシェリアスの父、オスカー・ルーヴ伯爵だ。
ライラが急いで立ち上がり「おかえりなさいませ、旦那様」と一礼する。
「お父様! おかえりなさい」
「ただいま」
「お父様、今スコーンを焼いているの! 一生懸命作ったので良かったらできたてを食べてくれますか?」
アーシェリアスに言われてオーブンを見るオスカー。