破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
(マレーアを出てから初めてだわ!)
アーシェリアスが興奮を抑えきれず、瞳を輝かせて女将を見つめる。
ザックは、ようやくアーシェリアスが夢へともう一歩踏み出せるのかと、密かに高揚しながら動向を見守っていた。
女将は小さく頷くと、懐かしそうに目を細める。
「亡くなった祖母から聞きました。幻の料理を作り、祖父に幸福をもたらしたのだと」
当時を思い出しているのか、そっと瞼を閉じる女将。
しっとりとした雰囲気を醸し出す女将とは対照的に、アーシェリアスは目を見張って思わず声を大きくする。
「お婆様が作ったんですか!?」
「え、ええ、話で聞いただけで料理自体を見たことはないのですが、確かそう言っていたかと」
女将の言葉に、アーシェリアスは胸を震わせて少し強くシーゾーを抱き締める。
(亡くなったとはいえ、ファーレンに作った人がいたなんて!)
うまく言葉がまとまらず、質問できないアーシェリアスの代わりに、ザックが唇を動かした。