破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
厨房に入る前からいい香りがすると思っていた為、それが娘の作っているスコーンだと知り頬を緩める。


「ありがとう。楽しみだ。しかしすまない。また仕事に戻らなければならないから、夜にいただこう」

「そうなのですね……」


しょんぼりと肩を落とした娘の姿に申し訳なく思いながらも、オスカーはアーシェリアスの前に立った。


「少し帰ったのは、アーシェ、お前に話があるからだ」

「お話ですか?」


わざわざ帰ってくるような急ぎの話とはなんだろうと首を傾げたアーシェリアスに、オスカーは部屋に行こうと誘って廊下へと出た。

もうじき焼き上がるスコーンはライラに任せ、アーシェリアスは父と共に自分の部屋へと向かう。

午後の日差しが溢れるアーシェリアスの部屋に入ると、オスカーは窓際の白いアンティークソファに腰掛けて、隣に座るように促した。

アーシェリアスはフリルのあしらわれたクッションを背にちょこんと座り父の顔を真っ直ぐに見る。


「実は、お前に縁談の話がきているんだ」

「縁談……」


父の言葉を真似て繰り返したところで、アーシェリアスは目を大きく見開いた。

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