破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
そんなある日のこと、アーシェリアスはシナリオに補正がかかっているのではないことに気付く。


「あっ、ミア。そこは濡れているから危な──」

「きゃあああ!」


学園主催のパーティーが行われた雪の夜。

前を歩くミアに忠告した途端、ミアは派手に転んでしまった。

その時、たまたま近くにいたアルバートがミアの声を聞いて駆けつけたのだが……。


「大丈夫か!? 何があった?」

「アーシェが……後ろから急に……」

「押したのか」


(ええええっ!? 決めつけ!?)


ミアは否定もせずただ瞳に涙を溜めてアルバートの腕の中でおとなしくしていた。

そして、アルバートが軽蔑の目を向けてくる中、アーシェリアスは見たのだ。

腕の中で隠れるようにニヤリと口角を上げたミアを。


(補正は、ミアの性格にかけられていたんだ!)


まさかの主人公腹黒補正にアーシェリアスは驚き一歩後ずさる。

逃げるつもりかと責めるアルバートのことなど正直どうでも良かった。

そんなことよりも、アーシェリアスは思い出したのだ。

これはアルバートルートに入った時に起こるイベントだということを。

だが、まだチャンスはあった。

ここで出る選択肢だ。


【選択してください】
▶︎私はもう大丈夫です
 アルバート様がきてくれて嬉しい


正解は二番目の方だが、この回答に失敗するとアルバートルートから外れて学園一のお調子者と呼ばれる男子生徒でアルバートに憧れる騎士見習いのジェイミー・クラークのルートに入るのだ。

このままでは家の名に、最推しである兄の未来に迷惑がかかる。

どうかアルバートルートだけはやめてと願うアーシェリアスの耳に届くミアの声。


「▶︎アルバート様が来てくれて嬉しい」


無情な現実に、アーシェリアスは思わず白目を剥いて心の中で「終わった……」とむせび泣いた。




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