破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「わっ!? なにこの子!」
「そなたへのお詫びだよー」
説明しながら手渡された黄色い毛の生き物は、小さくて黒目がちな瞳でアーシェリアスを見つめいている。
「モフモフだ……」
垂れた耳は愛らしく、背中には大きくはないが羽が生えているので飛べるのだろう。
「それは、好物のビスケットを与えるとお返しをしてくれる妖精なんだ」
「妖精……」
「仲良くしてやって~。では、エンジョーイ」
いきなり英語を使った神様は、腕の中の妖精にまだ戸惑い気味のアーシェリアスにウインクを寄こすと、あっという間に消えてしまった。
「エンジョイできるような状況にいないんだって」
思わず愚痴を零すと、妖精が「モフ?」と鳴く。
「え、あなたモフって鳴くの。いや、喋ってる?」
「モフー」
短い手足をバタバタさせて何かを訴える妖精。
よくわからないけれど神様が教えてくれたのでとりあえず好物を与えてみようと、アーシェリアスは屋敷の中へと戻り厨房を目指す。
その途中、廊下で掃除をしていたライラを見つけ足を止めた。
「ライラ。ちょうどいいところに」
「お嬢様、どうしまし……た」
ハタキを手にしたライラは、アーシェリアスの腕の中でおとなしくしている生き物に仰天する。