破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「この子にビスケットをあげたいんだけど」
「な、なんですかその生き物! 魔物を拾ってきたんですかっ?」
「ち、違うの。この子は魔物じゃなくて、妖精なんだって」
「妖精、ですか? 可愛らしいですけど……何だかイメージと違いますね……」
小さな人に羽が生えたのが妖精という印象が強いせいか、丸っこい動物のいでたちをした生物に違和感を覚えるライラ。
「あっ、それでビスケットですよね?」
「そう。厨房にあるかな?」
「ありますよ。お部屋にお届けしましょうか?」
「ありがとう! お願いするわ」
お返しがどんなものわからないので、とりあえず部屋で食べさせる方が良さそうだと、アーシェリアスは自室へと戻った。
そして、テーブルにつくとライラが持ってきてくれたビスケットをお皿からひとつ取り、妖精に手渡す。
「はい、どう」
どうぞと言い切る前に、妖精はアーシェリアスの手からビスケットを奪うと一口で頬張り咀嚼する。
そうしてあっという間に飲み込むと、短く小さい手を差し出して次を強請った。
「ほ、本当に好きなのね……」
アーシェリアスがまた一枚渡すと先程と同じようにしてビスケットを食べる。
それを数回繰り返し、お皿が空になると妖精はビスケットのかすを口の周りにつけたままアーシェリアスの膝の上で寝息をたてはじめた。
「えっ、お礼は」
またしても話が違うじゃないかと思いつつも、まあなんか可愛いしいいかと受け入れたアーシェリアス。
結局、妖精は夜になっても気持ちよさそうに眠ったまま。
声をかけても揺すっても起きないので、帰宅した父に眠る妖精を見せ、世話を許してほしいと懇願。
どうにか許可を得たアーシェリアスは、お返しを楽しみに妖精と共にベッドで眠った。