破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
それからアーシェリアスは学園が冬季休暇の間、毎日スニーカーのことを願いながらビスケットを与え続けた……のだが。


「今度は蕎麦!」


何度か試すも、お返しは調味料や食材ばかりだった。

ただ、やはりもらえれば作りたくなり、アーシェリアスは調味料や食材を使って懐かしの料理を父や兄、屋敷の者たちに振る舞った。

食べた者たちは皆感動し、口々にアーシェリアスの料理を褒めてくれた。

それだけで、アーシェリアスの心は満たされ、これから訪れる国外追放のことなんて忘れ……るわけがない。

満たされても不安は一向に解消されず、むしろ最終学期が始まってからミアとアルバートの仲は順調に深まっていた。


「いっそ逃げてしまおうか、シーゾー」


帰宅したアーシェリアスは、調味料=シーズニングを元に名付けた妖精の名を呼んで抱き締める。


「モフー?」


シーゾーと一緒に旅に出て、色々な地で料理を振る舞う。


「……いいかもしれない」


汚名を着せられて家に迷惑をかけるより、夢を見つけたという理由で旅に出るのなら婚約破棄もしやすい。

いつも美味しいと言ってアーシェリアスの手料理を残さず食べてくれる父だ。

渋るだろうけどきっと賛成してくれる。

そう思い、アーシェリアスは父が帰宅して落ち着いたところを見計らい相談を持ちかけた。

しかし、父の首は横にしか振られなかった。

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