破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「ひとり旅など危険だ」
「シーゾーもいるわ」
「シーゾーではいざという時にお前を助けられないだろう」
店を出したいなら、マレーアで出せばいいと言われてしまい、アーシェリアスは仕方なく引き下がる。
父の意見はもっともだからだ。
日本であれば危険も少ないけれど、魔物や盗賊が当たり前のように現れるこの異世界では確かに危険が多い。
(前世は移動が楽ちんだったなぁ)
学園からの帰り道。
昨夜の話し合いを思い返し、馬車に揺られながら自転車や電車などの乗り物を思い出すアーシェリアスは、外から賑やかな声が聞こえて小窓を覗いた。
どうやら市場で催し物が開かれているらしい。
市場の入り口に立てられた看板を確認すると【特産品フェスティバル】の文字が。
それを見た途端、アーシェリアスは馬車を操縦する御者に降ろしてくれと頼んだ。
(珍しい食材があるかも!)
シーゾーのおかげで作れるメニューのレパートリーが増えたアーシェリアスは、心を踊らせながら市場のお店を見てまわる。
並ぶ商品の中にはファーレンではなかなか見ない食材が売っていて、アーシェリアスの手には見る見る荷物が増えていった。