破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
ファレ乙の世界では、お米はメジャーな主食ではない。

価格も特に高くはなく比較的入手はしやすいのだが、アメリカやイギリスの食文化に似ていて、パンやじゃがいもが主食とされているのだ。


「これはお米を使った料理なの。スープは鶏から出汁をとったものよ」


さあどうぞと、ベッドサイドテーブルにトレーを置くと、美味しそうな香りがザックの鼻をくすぐった。


「いただきます」


少年の頃とは違い、はっきりと礼儀正しく挨拶をしてからスプーンを手にしたザック。

まだ少し湯気が立つおじやをスプーンでひとさじ掬い、一度だけフゥッと息を吹き掛けて冷ましてから口に運んだ。

とろとろの卵と出汁が染み込んでふっくらとしたお米を噛むと、口内に優しい味が広がる。


「……美味い。米をこんな風に食べるなんて初めてだ」


ザックが食べたお米の料理は、炊いたままのものや野菜と一緒に炒めたものだった。

こんな食べ方もあるのかと、ザックは感動しながら卵のおじやを味わう。

そして、完食する頃には身体がほっこりと温まり、満足気にホッと息を吐き出してからスプーンをトレーに置いた。

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