破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします

普通に考えたら二度しか会ったことのない人を家に連れて帰り看病するのはおかしいのだろう。

けれど、ザックのことを不思議と悪い人だとは思えなかったし、何より自分のことを覚えていて会いにきてくれたのだ。

よくわからないなど最初は誰もがそうだ。

何も知らないところからスタートし、少しずつ知って友人になるのだから。

料理も一緒だ。

素材のことを知り、少しずつ美味しい食べ方を知っていく。


(そう。今はザックの素性より旅! お母様との約束を果たすのよ)


父がザックの腕前に感心している今がチャンスと、アーシェリアスは本気を伝える為、瞳に真剣さを宿らせた。


「ザックが一緒ならいいですか?」


アーシェリアスが何を話しているのかを悟り、オスカーは深く息を吐く。


「……またその話か。そんな家が嫌なのか」

「逆です! このままでは大好きな家に迷惑をかけてしまうかもしれない。だから、それを避けるためにも私はお母様との約束を叶えに行きたいの」


必死さを纏うアーシェリアスの声に気付いたザックとレオナルドが剣を下ろし、様子を伺う。


「また、旅に出たいという話かな」


レオナルドが困ったように眉を下げて零し、ザックは無言でアーシェリアスを見守った。

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