破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
広がるのは一面の花畑。

緩やかな風に身を揺らすのは小さな赤い花々。

遠くに見えるのは、黄色い空から落ちるいくつもの細い滝。


「……ここ、どこ?」


自分は橋から川に落ちたはずだと思い出し、ではなぜ生きてるのかと思わず自分の両手を見つめる。


「死んでないの?」


零した疑問に答えたのは青年だ。


「残念ながら死んだんだな」

「えっ!? じゃあここは……天国?」


それならばこの不思議な景色も納得だと再び辺りに目を走らせたのだが、青年は「違うよー」と否定を口にした。


「それなら、地獄?」


不可思議ではあるものの穏やかな景色は地獄の風景とはかけ離れている気もするが、生きている人間が想像した世界だ。

違うこともあるだろうと思い聞いてみた。

しかし青年はそれも違うと頭を振る。


「ここは神界」

「しん、かい?」

「神々の住まう場所、と言えばわかるかなー?」

「神界……ということは、あなたは神さま?」


神々しさもないけれど、神さまの住む場所にいるならば単純にそうなのだろうと思って確かめてみると、青年は「あーたりー!」と軽い口調で答えて笑みを浮かべた。

本当かよと心の中で突っ込みつつ、ではなぜ死んだとされる自分が天国でも地獄でもなく神界にいるのか。

もしかして、天国や地獄などなく死んだ者は神界にくるものなのかと考え問うと、神さまだという青年は生を終えた者は普通ここにはこないと言った。
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