だ き し め て
「高野(たかの)くん……」
べつに誰を待っているわけでもないのに、彼を見送ったこの場所に佇む。
2人きりではなかった。人気者な彼のことだもん。放っておくひとなんて、彼と関わったひとの中には。
駅の改札前。柱に寄りかかる。風がびゅんと吹いて、目が痛かった。
――お別れ、ちゃんとしたいからさ。両親には先に車で行ってもらって、俺だけ後から新幹線で行くの。
本の整理中、彼が私に言った。切なげだった。切ないというのが合ってるのかどうか、わからないほど……爽やかに笑いつつあったから、彼の強さと弱みと、自分の心の内を知ることになった。
……痛かった。