だ き し め て
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「高野くん」
「うん?」
「ほんとに、……転校しちゃうの?」
伊花(いばな)の言葉に、返事が喉をつっかかる。前に転校の話をした。なんなら、伊花にいちばんに言った。
お別れをちゃんとしたいことも。伝えた。
「……うん」
絞り出すと、「そっかあ」と彼女は笑った。無理してる、と気づいてしまって、思わず顔を背ける。
背もたれに体重を押し付けると、ぎっと悲鳴。
「寂しくなるなあ」
俺だって。
「高野くんがいないと、ひとりになっちゃう……」
俺に顔を見せないためか、伊花は髪をかきあげた。手の甲をこちらに突きつけるようにして。そんな髪のかけ方、あるかよ。ぎこちないにもほどがある。