だ き し め て
「ネックレスしてるの?」
「……うん。校則違反なんだけど、バレないように」
「意外とやんちゃなんだね」
伊花。笑わないで。そんなに優しく、笑いかけないで。
……行けなくなる。から。
「こんにちは」
本を借りにカウンターにやってきた生徒がいた。伊花が対応をする。
……俺は……運に賭けることにした。
傍にあった紙を適当に手にして、 裏紙の余白をつかって、文字を書く。思いをえがく。紙にのせる。
「っ、」
届いてほしくて、届いたらちょっと恥ずかしいな。
最後にネックレスを外して、それで……。
心をだきしめられたような気がした。弱い。俺は弱い。だけど。
「お別れの日、駅まで行くから……見つけてね。ひと、いっぱいいそうだけど」
いたずらそうに微笑まれて、弱い心をだきしめられて、強くなれる。伊花の存在を忘れようとしていた、弱い心を忘れられる。あたためて、もらえて。