枯れた花は何度も咲く



雨に当たる度、
さっきまでのイライラとした感情を
流してくれている気がした。


あの家を出たことを、後悔していない。

ママに酷いことを言ったのを、後悔していない。



最初からあんな立派な家、
私には似合わなかったんだよ。


はあ、パパに会いたい…

パパに、抱きしめてもらいたい…




「 ハックション!! 」

ああ、風邪引いちゃうな…



バス停で、雨宿りをすることにした。




携帯と、財布と、通帳。

今手元にあるのはそれしかない。


どうやって生きていこう…




真っ暗な雨の夜、バスの明かりが見えた。




どこでもいい。


ただ、遠いところに行きたかった。




バスが私の前に止まる。





バスに乗るのは初めて。

少し、緊張した。





こんな夜なのに、結構バスに
乗ってる人っているんだ……


バスに初めて乗った時、そう思った。







「 お客様、整理券をお取りください 」

運転手さんが私に言う。



え!?

整理券ってなに…??


どこから出てくるの…??




なにも知らない私。

どうしたらいいかわからず、あたふたしていた。





「 あ、え、えっと、、 」





そのとき。


1人の男性が椅子から立ち、
整理券のある場所を教えてくれた。





「 あ、ありがとうございます! 」


男性の顔を見る。








私は、その男性から目が離せなかった。






すごく、パパに似ていた。






もちろんパパ本人だとは思わない。

歳は、私と同じくらいだと思う。






一瞬で、その男性に恋をした。



恋なんてしたことないから、
これを恋って呼ぶには間違ってるかも。



でも、その男性を見て、
キュンっとしたのは事実だった。




名前も知らない男性は、
私がお礼を言ったあとに
軽く会釈をして元いた椅子に座った。



見た目はクールで怖そう。


でも、こんな常識を知らない私を
先程助けてくれた。


そういう優しさも持ってるんだ。


本当に、素敵な男性だな…



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