枯れた花は何度も咲く
グイッ
突然誰かに腕を掴まれ、
気づけば私は抱きしめられていた。
「 えっ……? 」
誰か、なんて考えなくてもわかる。
香水の匂いで。
「 夜中に1人でふらつくなって 」
「 う、うぅ……グスン…… 」
「 怖かったな。もう大丈夫。 」
そうじゃない。
怖かったから泣いてるんじゃない。
あなたにまた会えたから。
私をまた助けてくれたから。
あなたに抱きしめられたから。
あなたが好きだから、泣いてるの。
彼は、ずっと頭をなでてくれた。
「 風邪ひくから、家おいで 」
さっきまでとは違い、
私を安心させてくれるような優しさだった。
やっぱり、あなたのことが好き。
彼の家は、小さなマンションで、
部屋も2人が入ると少し窮屈だった。
「 お嬢様には狭いだろうけど 」
「 ううん。私も、前はこれくらいの
家に住んでたから懐かしいな。 」
「 そうなの? 」
「 再婚する前ね。
でも、前の方が幸せだった。 」
「 そっか… 」
深くは聞いてこなかった。
それも、彼の優しさなんだろう。
「 ねえ、名前教えて? 」
「 名前か…… 」
頑なに言おうとしなかった。
「 好きなように呼んでいいよ 」
「 えっ!? 」
「 なんでもいい 」
予想外の返事に驚いた。
結局、名前を教えてくれなかった。
「 じゃあ……ゆう 」
" ゆう " は、パパの名前だった。
「 俺のこと、怖くないの? 」
「 え?? 」
「 だって俺は…… 」
「 理由があったんでしょ? 」
「 え…… 」
「 ゆうは、優しいよ。
私のこと2回も助けてくれたから。
そんな人が、理由もなく
殺人を犯したりしないと思う。 」
「 君、ほんと変わってるね 」
「 ふふ、よく言われる 」
どんな理由があったかわからない。
でも、ゆうの心には大きな傷がある。
その傷を私が癒してあげたいと思った。
これを、愛と呼ぶのか…
「 ベッド使っていいよ。
俺、ソファーで寝るから。 」
どこまで優しいんだろう。
こんなに優しくされたの、久しぶり。
今日は色々ありすぎたな……
私はベッドに入り、直ぐに眠りについた。