アルティロストの薔薇姫
プロローグ
いつもいつも、自分が嫌いだった。
「あら、ラスフィティリア様よ。今日もお美しいわぁ!」
「えぇ。本当に。…でも、所詮は『お人形さん』よね。お兄様方はあんなに優秀なのに、ラスフィティリア様は…普通、というか…ねぇ?」
こそこそと私の噂をする、使用人が嫌いだった。
「はぁ。ラスフィティリア様は気楽よねぇ?ご実家は公爵家。婚約者は王子様。
対して優秀でも無いくせに。」
嫌味を言う、令嬢が嫌いだった。
「お前はただ、『お人形』でいればいいんだよ?ラティ。」
「俺の視界に入るな、この愚妹。」
「満足に花嫁修業もできんのか?この私の嫁になる女として、恥ずかしくはないのか、貴様!」
父も。
兄も。
婚約者も。
皆、皆、大嫌いだった。
『お人形さん』は嫌なのに。
私は…優秀じゃないから。
お兄様とは違うから。
だから…あの日。
私の足元に現れた奇怪な模様が光り、私の体を猛烈な痛みが襲った時。
ようやく終わると思った。
『お人形さん』は、終わると思った。
訳も分からないまま、眩しい光に包まれ私は思う。
「次の人生では…人形ではなく、人として…気高く自由に生きる」と。
これは私の人生譚。
ただひたすらに自由に生きた私の物語。
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