仮眠室で愛を叫べば
それは小説が原作の時代劇ものだった。

「若いのに随分渋いな。
俺に気ぃ使った?」

「えっ?
気なんて使いませんよ!
私だってジャンケンで勝つ気まんまんでしたから!

先生こそむしろこのアクションもの選ぶかと思いました。

なんか先生といると父といるみたいです」

私の言葉に先生は眉間に皺をよせ複雑な顔をした。

「父って…せめてそこは兄だろ!

そんなにジジィかよ俺」

落ち込む先生の言葉に自分の失言に気がついた。


「すみません!!

父とはほとんど一緒に暮らしてなくって。
私母を小さい頃に亡くしてて祖父母に育てられて。

父が転勤の多い仕事なので兄が父親がわりで。

だから私にとっては兄も父親みたいな存在なんです。

あれ?なんかあまり言い訳にな
ってないですかね…?」

しどろもどろしている私に先生はまたふっと笑い、手をつなぐと「行こう」
と私を促した。

自然と繋がれた手に私の心拍数がはねあがった。

 
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