仮眠室で愛を叫べば
「ふーん。
目そらすなら好き放題するぞ」

途端に動き出す手にすぐに私の息は上がり出す。

「…寝たのかと思ってた…」

唐突に呟かれた言葉に息が止まるかと思った。

閉じた目をあけて彼の顔を見ることができずにいた。

「頭では理解してたけど…アイツと一晩過ごしたんだろうなって覚悟してたけど、、、そう考えたらなかなか手が出せなかった…。
でも、違ったんだな。
ごめん、勝手に思い込んでて。
ごめんな。
ありがとう、俺を好きになってくれて」

「圭吾、、、、」

彼の本音に涙が溢れた。

「ごめっ、ごめんなさい、、、
ごめんなさい、、、、」

黙っているべきだったのかもしれない。

知らなければ幸せなことはある。
嘘とごまかしがきらいでも、知らなければ幸せなことだってあるのだから。

私の告白を聞いた彼はただ一言

「もう終わった過去のことだ」

そう言って笑った顔を私は直視できなくて、ふいに力強く抱き締めた圭吾の背中に腕を回し、私は黙って抱き締め返すことしかできなかった。

< 56 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop