仮眠室で愛を叫べば
泣き続ける私の両頬を大きな手が包み込む。
「目あわせてよ恵」

恐る恐る開いた目の前には、困ったように笑いちょっと不貞腐れた圭吾が私を見つめていた。

「俺、最初に言ったよな?
忘れるために利用してかまわないって。
ごめん、余計なこと言った俺が悪いよな。ただ、未遂とはいえ正直、恵に触れて裸見たのはおもしろくない。でも、今俺が好きなんだろ?」

「好き…」

ふっと笑う優しい瞳がじっと見つめる。

「過去にヤキモチやいたって仕方ないだろ。
それに、取り返しがつかないほど俺は恵を愛してる。
それでも恵が気にやむなら俺も話すよ。前の彼女のこと。どうする?聞くか?」

少し悩んで私が頷くと、圭吾は静かに話出した。

私の前に付き合っていた彼女の話を。

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