仮眠室で愛を叫べば
宮前先生は毎日昼休み、仕事のあとと病室に顔をだす。

頭の傷は順調に回復して肩の骨折が治れば退院できる。

それでもあと一ヶ月は入院生活を送らなければいけないが、長田先生の結婚式までには無事に退院できそうだ。

「先生、忙しいんでしょ?
毎日こなくても大丈夫だよ。
私にばかりかまわなくていいから誰かと飲みにいったり遊びにいってかまわないよ?」

今日も仕事が終わり、面会終了まで居座るきまんまんの宮前先生が病室に顔を出した。

私の言葉にムッとして不貞腐れながら

「俺が一緒にいたいからきてる。
邪魔にすんな」

そう言ってベットに腰かけると私の手を握った。

「俺も外科で働きたい…」
「仕事しなくなるでしょ」
「入院したい…」
「仕事してください」

ふっと笑い繋いだ手に力がこもる。もう片方の手の指が私の唇をなぞる。

「いい?」

「聞かないでくだ…」

いいかけて大きく目を見開く。
あぁそうだ。

私と先生の初めてキスしたときのやりとりだ。

「圭吾…」

そう呟くと嬉しそうにふっと微笑む私の大好きな顔が閉じかけた視界に入り私たちは唇を重ねた。


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