元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!【番外編】
遠く、けれど決して色褪せない記憶に思いを巡らせていたメッテルニヒは、伏せていた瞼を開き窓の外を眺める。
(――私は、ツグミに憧れているのかもしれないな)
ルーツも血筋も関係ないこの異世界で、自分が何者になるか迷わず決められた彼女のことを思い出す。
ツグミはいつだって自分の意思で生きている。怯えず、迷わず、ためらわず。
そのまっすぐな姿がメッテルニヒには眩しく、そしてどこか懐かしい。
彼女が永遠の命をどう生きるか、知りたいと思った。秘書官として、ヨーロッパの宰相として、行政官のトップとして。そして女として――母として。
そう願ったとき、メッテルニヒは自分の中で潰えたと思っていた感情が目覚めるのを感じた。
――彼女がどんな生き方をしても、一番そばで見続けるのは私だ。
それは独占欲。誰にも渡したくないと、胸が熱く疼いた。