皇帝の胃袋を掴んだら、寵妃に指名されました~後宮薬膳料理伝~
私は薬膳に関する書物に手を伸ばし、もう一度頭から読み始めた。
「あっ……」
数ページ進んだところで、劉伶さまのことがふと頭をかすめる。
はっきりとは言えないけれど……彼には“水毒(すいどく)”の傾向があるような気がしてならない。
男とはいえすこぶる美形だったけれど、顔の輪郭がはっきりしておらず、むくんでいるように感じた。
腎臓の働きが低下しているような。
といっても私は医者ではない。
“感じた”だけであって空振りかもしれない。
「もう会うこともないわね」
それに、もし水毒だったとしても、旅人ならばもうこの村にはいないだろうし、私が関わることもない。
そんなことを考えながら、その日は眠りにつくことにした。