皇帝の胃袋を掴んだら、寵妃に指名されました~後宮薬膳料理伝~
「まさか……」
昨日の劉伶さまたちは、皇族の関係者で、離宮にやってきたとか?
そう考えると、あの上品なたたずまいも納得がいく。
皇帝が住居としている昇龍城より高地にあり涼しいということで避暑のために作られたのだが、もしかしてこの夏に来るつもりで下見に来た?
様々な憶測が頭を駆け巡ったものの、私には縁遠い話だった。
しかし、昇龍城については村でも話題に上る。
香呂帝の後宮は、大陸の各地より有力者の娘や帝好みの美女ばかり集められていると聞く。
といっても、三千人近くもいるのだからお目通りすらなかなか叶わず、帝のお手付きとなるのは皇后、そして数人から数十人の位の高い妃賓だけ。
たまたま帝が気に入った女官が寵愛を得ることはあれど確率的にはとても低く、あとはただの下働きだ。
しかも、後宮は皇帝以外の男子禁制。
すべての女官は皇帝のものであり、一旦後宮に入ったら、皇帝が崩御でもされない限り出ることが叶わない。