皇帝の胃袋を掴んだら、寵妃に指名されました~後宮薬膳料理伝~
私がぶつかった真ん中の人が一番背が高い。
彼は切れ長の目とすらっと通った鼻筋。
そして細身ではあるがしっかりとした体躯を持つ、辺境の地ではまず見たことがないような気品あふれる人物だった。
誰だろう……。旅の人?
そんなことを考えていると、その男の前にひときわ体つきのよい男がスッと立つ。
そしてまるで私をけん制するかのような鋭い目つきでにらんだ。
な、なに?
畏怖の念を抱き立ち上がることすらできないでいると、真ん中の男が口を開いた。
「玄峰(げんほう)、その強面をなんとかしろ。彼女が震えているじゃないか」
「しかし……」
「ごめんね。玄峰の顔が怖いのは生まれつきなんだよ」
私に手を差しだす男の人は立たせてくれようとしているらしい。
よかった。
怒ってはいないみたいだわ。
「劉伶(りゅうれい)さま。生まれつきなどという言葉で片付けられては努力のしようがありませんが?」
玄峰さんはますます顔をしかめて苦言を呈する。しかし、その通りだ。