皇帝の胃袋を掴んだら、寵妃に指名されました~後宮薬膳料理伝~
「あはは。とりあえず努力してみれば?」
劉伶と呼ばれたその人は、私が手を重ねることを戸惑っているのに気づいたらしく、彼のほうから腕をつかんで立たせた。
「汚れてしまったね」
そして砂のついた臀部をパンパンとはたかれ、頬が真っ赤に染まる。
「あっ、結構です!」
慌てて体をよじると、色白で一番背が低く、しかし美形の男性が口を開く。
「劉伶さま。女性に気軽に触れてはなりません」
「どうしてだ、博文(はくぶん)。泥がついていたのをはたいただけだ」
「どうしてもです。彼女が困っているじゃありませんか」
博文さんがたしなめると、劉伶さまは「あっ、ごめん」なんて人懐こい笑顔で言った。
この人だけ『さま』を付けて呼ばれているということは、位が高いのかしら?
「い、いえっ」
しかし三人ともにこの辺りでは見ないような高貴な情調が満ちあふれていて、――いやそれより顔立ちが整いすぎていて――気圧される。
玄峰さんは少々強面だけど。