お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「しゅ、柊一朗さ……」

「澪。目を閉じて」

真剣な眼差しに、思わずドクドクと鼓動が高鳴る。

彼の本気顔に弱い。胸の奥がグラグラと揺れて、キスを拒むことすら難しい。

吸い寄せられるように近づいていく唇の距離。

わずかに躊躇い、ふっと視線を漂わせると。

視界の隅っこで、鉄板の上のはまぐりがパカッと口を開けた。

「は、はまぐりが焼けました!!」

「……え?」

彼の視線が鉄板へ向く。その隙に、私はさっと彼から遠ざかり距離を置いた。

逃げられたことに気づいた彼は、不服そうな顔ではまぐりに醤油を垂らす。

「とにかく、雉名と接触禁止」

「……はぁ」

雉名さんに二回ほど頭を撫でられたことを思い出し、これがバレたら柊一朗さんはさぞ嫌な顔をするだろう、と苦笑した。

とにかく、彼の前で雉名さんの話題はもう切り出すまいと、しっかりと胸に刻み込む。
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