お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「柊一朗さん? これって……」

「少し待っててもらえる?」

彼が電話をかけ始め、短く通話を終えると、すかさず業務用通路からスーツ姿の男性が出てきて、お待たせ致しました、と柊一朗さんへ頭を下げた。

「ようこそお越しくださいました、千堂さま。ご案内致します。どうぞこちらへ」

男性は私たちを連れて業務用通路へ入ると、警備員が常駐するゲートで関係者用のパスを二枚受けとり、私たちへ手渡した。

「一週間後のオープンを控え工事はすべて完了し、海洋生物たちの搬入も済みました。あとは、従業員の研修と最終調整を行っています。中をご案内致しましょうか?」

男性は私の姿をちらりと確認しながら遠慮がちに言う。

「いえ。不要です。こちらで好きに見学させてもらいます」

「ではごゆっくりご覧ください」

男性は私たちを入口まで案内してくれた。

ネオンカラーで彩られたアーチの上部に『東京サンライト水族館』――この水族館の名前が刻まれ、その先に順路の矢印が伸びている。

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