お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「ご両親には、俺のことをなんと説明したの?」

「付き合っていることにしてます。その方が都合がいいんです。次のお見合い写真を持って来られなくて済むので」

「そんなに結婚を勧められるんだ?」

「姉が結婚して、矛先が私に向いちゃったんです。早く私を嫁に出して、私の部屋を孫の部屋にするんですって」

「あはは、なるほど」

他人事のように彼は笑う。私にとってはすごく深刻な事態なのに。

「笑いごとじゃないんですからね。ひとり暮らしをして実家から逃げ出そうかと」

「ひとり暮らしする予定なの?」

「部屋を探してはいますよ。けれど、生活は厳しくなりますし……」

都内に実家がある、これはそこまでお給料が高くない私にとって、かなりのメリットだ。

そもそも、二十七年間も家族と一緒に暮らしてきた私が、いきなりひとり暮らしだなんて大丈夫だろうかという不安もある。

仕事から帰ってきても家に明かりが灯っておらず、誰もいない。ずっとひとりきり、誰とも会話がないまま、朝を迎える……。

騒々しい家で育った私に、ひとりぼっちは耐えられるだろうか。
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