お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「いくら口うるさいとはいえ、大切な家族ですしね。いなければいないで、寂しいんでしょうし」

ふう、と肩を落とすと、彼はなにやら神妙な顔で切り出した。

「……なら、俺と暮らす?」

「……へ?」

脈絡のない提案に、ぎょっと目を瞬く。

どうしてそこで、一緒に暮らすという選択肢が出てくるの……?

「まぁ、言ってしまえば婚前同棲ってやつかな? 家賃や生活費は俺が持つし、寂しくはないでしょ」

「え、いや、あの、待ってください、そりゃあ寂しくはないかもしれませんが」

どこか前提が足りていない説明に、私は唖然とする。

「私、まだ、結婚するなんてひと言も――」

「体裁の話だよ。親には同棲と説明すればいい。君はただの同居だと思えばいいさ。もちろん俺には下心があるけれど、君が嫌がるなら手を出さないと約束する」

堂々と『下心がある』と宣言されてしまったあたりで、私は頬をひくっと引きつらせたけれど、彼はそれに気づかないふりで独自の理論を振りかざす。
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