お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
私にとっては、このパッとはしないけれど着実に実績を積み重ねてきた中小企業『新海エレクトロニクス株式会社』はベストな就職先だったと思っている。

私がこの会社に中途入社したのは二年前、二十五歳のとき。

それ以前は、誰もが名を知る大手企業に勤めていたのだけれど、事情があって二年で退社を余儀なくされてしまった。

大企業は、福利厚生がいいとか、女性に手厚いとか、いろいろ言うけれど、結局はその企業次第。そして、個人の主観次第だ。私にとって、大企業は軽いトラウマだ。

……私には、ここが一番。

きっと彼にも、ここに来た理由がなにかしらあるのだろう。

もし、本当にふたりでご飯に行く機会があったら、聞いてみようかな……。

あれ、そういえば、ディナーの話、結局どうなったんだっけ。

ジェラートの話でかき消されて、行くと答えたのか答えていないのかすら思い出せなくなってしまった。

自然消滅ってことかな?

それはそれで気が楽だなあと思いつつも、ちょっぴり寂しい気もするのだった。
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