お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「不正に目をつぶることになり、悔しかったのは俺も同じだ。当時の俺は、次期社長と呼ばれながらも、なんの権力も持たなかった。いつか俺の代になって、会社の責任を任されたとき、必ず悪しき風潮を粛清しようと誓ってここまでやってきた」

彼の口から、私が想像もしなかった熱い言葉が漏れる。

あの出来事を、こんなにも真剣に考えてくれている人がいただなんて――。

「二年かけて、ようやく体制が整いつつある。近いうちに俺が社長へ就任して、クリーンな組織に作り変えてみせる。それが実現したら、必ず君にあのときのことを謝罪しようと心に決めていた」

柊一朗さんはテーブルに手をつくと、私に向かって大きく頭を下げた。

「本当に、申しわけなかった。君は間違っていない。君が残してくれた課題を、必ず未来へ繋げ解決すると約束する」

本気の謝罪だった。柊一朗さんとしてではなく、きっと、日千興産を背負う次期社長としての。

私の行動は、ただ無駄にあがいただけで、誰ひとり心を動かすことが出来なかったのだと思っていた。

けれど……違っていた。ちっぽけな私が起こした非力な反抗にも、真剣に向き合ってくれる人がいた。

私があきらめて挫折してしまったことを、彼はちゃんと形にしようと、行動を起こしてくれていた。
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