お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「柊一朗さん……頭を上げてください」

いつまでも頭を下げたままの彼の手を、ぎゅっと握る。

「柊一朗さんが真剣に考えてくれていたことはわかりました。だから充分です」

「二年前、君を擁護することが出来なくてすまなかった」

「いえ。いいんです。無駄じゃなかったって、わかったから」

顔をあげて笑ってみせると、彼は安心したように目を細くした。

お互い、肩の力を抜いて、表情を緩ませる。心なしか、心の距離までほんの少し縮まった気がした。

「……ただひとつ、気になっているのは……」

私が目を伏せると、彼は「なに」とわずかに緊張感をとり戻して身を乗りだした。

「あのときの彼女が、幸せに暮らしてくれているといいんですが……」

救うことのできなかった、同期の彼女。事件のあと、消息を絶ってしまった。

別の場所で、新たな人生を歩んでくれていればいいのだけれど。

彼女ひとりで、まだ過去を乗り越えられず苦しんでいるのだとしたら……胸が潰れそうに苦しくなる。

けれど、柊一朗さんは、口元をふんわりと柔らかくして息をついた。
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