お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「目を逸らすな。澪」

「や、やだ……」

「どうしてだ。俺の顔が嫌い?」

「そんなんじゃないです」

「だったら、こっち向いて」

ちょっぴり強めな口調で言われてびっくりして、ぎ、ぎ、と目を向けた。真正面から目が合ってしまい、体が痺れたように動けなくなる。

「いい加減、ちゃんと俺の目を見てくれないと怒るよ。俺はあれから、ずっと澪と真正面から向き合ってきたんだ」

「ご、ごめんなさい……」

思わず謝ると、「謝ってもらいたいわけじゃないんだけど……」と瞳を悲しく陰らせた。

「『どうして私なのか?』と聞いたね。でも、愛している理由なんてうまく説明できない。澪の強さ、弱さ、優しさ、脆さ、いろいろなものが複雑に合わさって、魅力を放っているんだから。強いて言えば、澪の全部がほしい」

そう漏らして、唇を限界まで近づける。熱い吐息が鼻先を掠めて、トクン、トクンと鼓動が速まっていく。

「早く澪を、俺のものにしたい」

そう息を切らしてつぶやきながら、彼は私の唇にキスを落とした。

食んで、舌で舐めとっては離れて、そんな動きを幾度となく繰り返す。
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