お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「安心して。このくらいにしておくから。じゃないと、また君を持ち帰りたくなってしまう」

彼は掠れた声を漏らし、名残惜しそうに深く口づける。

舌が何度も何度も私の口内を行き来して、もっと先をほしがっているのだけれど、彼は冷静さをとり戻すように、はぁ、と大きく呼吸をした。

「澪のキスは、おいしいね」

「な、なに言ってるんですか、もう」

「そんなに顔を赤くしていては、どんなに憎まれ口を叩いたって説得力ないよ。デートを日曜じゃなくて、土曜にしておけばよかった。そうすればこのあと、澪の全部をもらえたのに」

悪魔みたいに煽情的な眼差しで睨みつけられ、たじたじになった。

私への愛をひたすらささやき続ける彼は、羞恥心が欠落しているんじゃないだろうか。聞かされるこちらの身にもなってほしい。

そんなことを言われたら――うれしすぎて、照れくさくて、どうにかなってしまいそうだ。

「……全部なんて、あげません……」

真っ赤になってそう答えると。彼の体を突き放し、まだ熱の残る唇を手の甲で拭った。
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