お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「こ、ここまでで、大丈夫です、今日は、ありがとうございました!」

急ぎ足で感謝を告げると、彼と目も合わせずに走り出す。

「澪!」

彼の声にも振り返らず、家まで一直線にひた走る。

もっとしてほしいって言葉が、喉まで出かかっていた。これ以上一緒にいては、耐えられる自信がない。このまま連れ帰ってって、お願いしてしまう。

土曜じゃなくてよかった。もしも明日が休みだったら、きっとまた彼に全部を預けてしまっていた。

一日一緒にいただけで、あっさりと気持ちを持っていかれてしまうなんて。

彼の吸引力が強すぎて、太刀打ちできない。

「ただいま」

家に飛び込むと、リビングにいた父が声をあげた。

「おかえり。随分遅かったじゃないか」

揚々とした声。この時間まで帰ってこなかったのだから、デートは大成功したのだと推測しているのだろう。

悔しいけれど、その通りで。リビングを素通りして、私は階段を上り自室へ向かう。
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