お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「き、雉名さん、どうしてこんなところに」

「俺が総務に来ちゃ悪いのか? 社内領収書をもらいに来ただけだ」

彼はレシートをペラペラ振って、気だるそうに私を見下ろした。

「急遽、ハブとLANケーブルを増設したから、精算したいんだが」

「あ、はい、それでしたら……」

私は慌ててパソコンに表示されていた物議を醸しかねない記事を閉じると、席を立ち、背後のラックから領収書の原紙を取り出した。

「で。見合いって? どんなやつと?」

「……どうしてそういうこと聞くんですか」

バカにされているような気がして、ちょっとムッとしながら尋ねると、彼は明らかにからかっている顔でにんまりと笑った。

「面白そうだからに決まってんじゃん」

「冷やかさないでくださいよ!」

乱暴に原紙を突きつけると、彼は私のデスクから勝手にペンを拝借して、領収書に金額と品名を達筆に書き散らした。

「怒るなよ。ちょっと気になっただけだろ。じゃ、精算よろしく」

領収書とレシートを私に押しつけて、彼はさっさと総務を後にする。
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