お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
夕方六時。定時を知らせるチャイムが鳴り終わり、私はほうっと息をついた。

十一月の半ば、この時期は割と仕事のペースに余裕がある。

月末、月初は、給与計算や勤怠管理、その他諸々の手続きが重なって、やらなければならないことが山積みになり、残業続きだ。

さらに来月ともなれば、年末で鬼のように忙しくなるから、今が今年最後の安息と言っても過言ではない。これが定時で帰れる最後のチャンスかも。

「お疲れさまでした」

私はそそくさと帰り支度を済ませ、オフィスを出た。

ホールで一階に向かうエレベーターを待っていると、遠くでドアの開く音がして近づいてくる足音。

ちらりと体を傾けて、通路の向こう側を覗いてみると、ビジネスバッグを肩に載せ、ツカツカと歩いてくる雉名さんの姿があった。
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