お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「痛って! なんだよ、暴れんなよ」

「その頭撫でるのも、いい加減やめてください! 上村さんにすごくからかわれるんですからね!」

「あんたが隙だらけなのがいけないんだろ」

「す、隙……?」

その瞬間、くいっと顎を持っていかれた。

驚きに声をあげる間もなく、気づけば目の前に雉名さんの顔があって、私は目を丸くする。

「ほら。わかるか? これが隙だ」

鼻先のすぐ上で、雉名さんがささやきかける。異常に近い距離。それはまるで、キスのときのような……。

「え……あの……」

呆然として、言葉を失くしたまま見つめ合う。

どうして急にそんなことを。からかわないでくださいと、反論しようとした、そのとき。

突然背後から腕を強く引かれ、うしろへ倒れ込んだ。

トン、と背中を手で支えられて、体を斜めにしながら見上げてみれば、そこに男性が立っていて。
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